もう少しだけ旅させて

旅日記、のようなもの(2012-16) 基本一人旅 旅に出てから日本語を使わないので、忘れないように。ほとんど本人の備忘録になりつつあります。情報は旅行時のものです。最近はすっかり懐古モードでひたすらノスタルジーに浸っています。

アテネ

アテネ


ヨーロッパの主要国の中では北欧を除いてギリシャが残っていた。以前アルバニアへ来た時に、最初そのままギリシャに抜けようと考えていたのだが、よんどころない理由で止めてしまった。その後は新婚旅行にとっておくんだなんてうそぶいていたのだが、なんかありそうにもないので(笑)この際来てしまった。元祖 ”新婚旅行にとっておくのだ” ドブロブニックなんて既に2回も訪れてしまったわけで…


それにしても久しぶりのヨーロッパ。いつ以来だろう?そう2003年12月25日の夜にシベリア鉄道に飛び乗ったモスクワ以来のヨーロッパだ(コーカサスは含めないと)。

いやいや、ご無沙汰しておりました、と挨拶してみる。

夜が怪しいヨーロッパ。街が絵になるヨーロッパ。女性が美しいヨーロッパ。アジア人旅行者によそよそしいヨーロッパ。身も心も寂しくなる冬のヨーロッパ。僕の知っているヨーロッパが次々に蘇ってくる。


とりあえず、アクロポリスへ行くのだ。すべてはここから始まったのだ(とも限らないが)と習ったギリシアには、何とヨーロッパの締めとして最後に訪れることになったわけだ。
多少興奮しながら12ユーロ支払い坂道を登る。古い遺構やアンフィシアターを辿り、そして正面の階段をあがる。

わかっていた。パルテノンその他は昔から腐るほど写真等をみている。だから、丘の上の光景には多分感動などしないことなど、わかっていた。だが実際この目で見れば新たな印象を受けるかもしれない。一縷の望みを繋いだものの、第一印象は 
「丘の上、なんか、スカスカ…」
がらんとしていることにアクロポリス自身の責任は無い(笑)。仕方の無いことだと頭で理解はしているが、パルテノンの無粋な修復用足場が雰囲気を台無しにしている。これが邪魔しているおかげで、どうやっても建物自身の持つ美しさを想像することができない。自分の頭の悪さを棚に上げてコイツを非難しても始まらないのだが。。。エレクティオンの彫像の後ろにある黒っぽいガラスの箱は何なのだろう。。。

シーズンオフで団体観光客等がいないことだけはラッキーだ。そのかわりうるさいギリシャ人学生(中学生くらい)の集団が先生に引率され見学に来ていた。彼らは早めに去っていくからゆっくりやりすごせばよい。

「がっかり世界遺産」と人はよく言うが、僕にとってはアクロポリスは微妙なところにある。建築学科の学生時代以来、パルテノン神殿やレクティオン等は常に身近に存在していた。様々な解説や言及、足場の無いきれいな写真(修復前のか)、配置図面… 結局、いろいろな情報が既に頭に入り過ぎているということなのだ。
人類史上の意義はmaxであることに異論はない。が、その場で受ける感想は個人により様々だろう。あー、ギリシア神話や歴史の知識が有れば、もう少し違った印象をうけたであろうことは容易に想像できる。
でも予備知識など全く無い状態で接したら、どのような感想を持っただろうか。


その後はアゴラやゼウス神殿、パシナイコス競技場などひととおり回った。観光地としては十分楽しむことはできた。タヴェルナの食事も良かった。アテネの人はみな愛嬌がある。観光地だからとしても、悪い印象を持つはずがない。やっぱり地中海の国はいいなあ。


考古学博物館とアクロポリスミュージアムには翌日訪れ、貴重な発掘品やレリーフ、彫刻のオリジナルなどをゆっくりと拝見した。ひさしぶりに気合をいれて博物館を鑑賞した。


そして夜の散歩。はっきりいって落書きが多い。現在の他の都市の状況を知らないので比較はできないがここはヒドイ方ではないか? オレンジ色のやわらかい光の下ですら、そのせいで荒れた表情を隠すことができない。でも夜の闇は余計なモノを幾らか見えなくしてくれるので、昼間よりかはマシだ。光と影の織り成す硬くも物憂げな表情。葉の無い街路樹も何か繊細なオブジェにすら思える時がある。

9年1ヶ月振りのヨーロッパ。思えば長きに渡り不在にしたものだ、と独り言のように小さな声で言ってみる。


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