ボロブドゥール
ジョグジャカルタの町外れのバスターミナルから、結構年季の入ったバスは唸りを上げて出発した。
天気が心配だが、まだ雨期なのだから仕方がない。
途中、買物へ行くおばちゃんや学校帰りの女学生の集団を乗せたりと、車内をローカルな緩い空気で満たしたバスは、坦々と進んでゆく。
薄曇りの柔らかな陽差し、流れゆく田園風景、乗客の会話、風が運んでくる生活の匂い。
規則的なエンジン音すら心地良い。このままずっと乗り続けていたい気がしてきた。
終点のバスターミナルに隣接した薄暗い食堂で腹ごしらえをした後、はやる心を押さえ足早に入口へ向かう。
アンコールワットを訪れた7年前から、次はボロブドゥールに行かなくては、と思い続けてきた。
有名なボロブドゥールは、仏教遺跡ということでアンコールワットとつい比べてしまう。
アンコールの方は周囲にある他の遺跡をも含めて一体の群としてみられるべきものだろう。
だから規模はこちらの方がずっと小さい。ほとんど単体だから。
緑の中に半ば埋まったようにもみえるこの遺跡は、早朝や夕暮れが美しいのだろうと思う。
刻々と移り変わる陽の光のもとで、大地と一体になり自然ともに呼吸をする。
光に溢れた昼間は普通の旅行者でいっぱいだ。今日は平日なのだが多くの人がいる。
観光バスや車で来る人が多いようだが、中には同じバスに途中から乗ってきた地元の人もいる。
若いカップルから家族連れ、グループ、実にローカルで和気あいあいな雰囲気が、これはこれで好ましい。