フンザ3
地震から既に3日経っているのに、土砂崩れが幾つかの場所で起こっている。時々ドゥオーン!という音が響き、谷のほうに目をやると、何処からか砂煙が舞い上がっているのが判ることがある。地元の人は気にしていないといっても、その音を聞く度に少し怖い気がする。
ここはGH向かいの谷なので否が応にも目に付く。
僕の泊まっている宿はオールドフンザインで、他に旅行者は日によって1人いるかいないかという感じだ。暇なのでオーナーのラル氏(通称「勝新」~似ているので。自分で名乗っていた)とよく会い話をする。イスマイリア派の他の宗派とは異なる特徴とかシーア派から分かれた歴史とか何故オールドフンザイン&フンザインと併記されるのか(登録上はフンザインだが、一番古いGHなのでいつのまにかオールドを付けて呼ばれるようになった)とか自分はガネーシュの方に家があり(毎日上がってくるのか!歳の割には背筋が伸びているわけだ)小さな畑で野菜を作っているとか、昔の話とか色々教えてもらった。たいてい夕方で、停電中のことが多い。食堂にはガスボンベを使ったランプのようなものがありそれを灯すことになる。そんな中での会話は今まさにここでしかできない雰囲気があって、ゆっくりと噛締めるように時間を過ごした。
彼も会うたびに林檎をくれるので、朝食とおやつは毎日自動的に林檎になった。そういえば林檎は百薬の長といわれるほど栄養のバランスのとれた食べ物。旅人にとってはこの上ない頂き物だ。
ここ数日の夕食はアメリカ人のジェイソンとメニューの中からローカルフードを選ぶ。一人だと手間を掛けるのが悪くて何でも良いというと簡単なダールとかカレーになってしまうので来てくれて助かった。彼は中国をまわってからパキスタン入りをしたので丁度ルートが逆。関心を持っていることが近く話が意外と合い、色々教えてもらう。
それにしても部屋の中はちょっと寒い。この後判る事だがパキスタン北部の安宿・ゲストハウスはどこも室内に暖房設備はない。やはり、もう少し早く来るべきだったかなと思う。でも天気さえ良ければ、色濃く澄んだ青い空と山並みに黄色く染まった木々の葉が美しく映える。2年前の秋にパミールを旅したときに感動して、敢えてこの時期のフンザを選んでみたというわけなのです。
貰った林檎。赤い方は少し酸味がある。黄色い方は味は薄いが水分が多い。
そういえばスリナガルでジョナから庭で採れた林檎をもらった時も同じ様な事を言われたことを思い出す。確か黄色い林檎は料理に使うと言っていた。