パスーへ行く
カリマバード出発前日にそのことを伝えると、翌日は親父がソストまで行く用事があるから一緒に乗っけて行って貰えば良いと、顔の似ているラル氏の息子は言うので好意に与ることにした。その時何か変だと気付いた。アーリアバードから北上して暫くするとKKHは土砂崩れによりできた湖に水没しているので、ボートに乗換えるのではなかったっけ。そういうと彼は新しいトンネルが出来上がったので直行できるというのだ。えっ!そうなの。隣にいたジェイソンもその通りだと頷いているので間違いはあるまい。思いがけず手間が一つ減ったと思ったが、これが元々の姿なのだ。でも湖上から眺める山々の眺めも実は期待していたのだけれどなあ。
翌日出発時間にラル氏が何とライフルを肩に掛けてやってきた。またもや、えっ!てな感じで驚いた。
-----もしかして、ハンティングに行くのですか?
-----そう、鴨を撃ちに行くのじゃ
-----わざわざソストまで?
ガネシャ近くの道路まで降り、彼の友人の運転する車に乗り込んだ。
新しいトンネルは確かに完成していた。開通したのは1ヶ月くらい前のことらしい。順に短長短長短とい5つのトンネルが続く。3番目と4番目の間は少し空き青い湖がちらりと見えた。トンネルを抜けた後も少しの間湖と並走し、使われなくなった無人のボートがまだ湖面に残されているのが見えた。実はそのボートに揺られながらゆっくりと山々を眺めることを少し期待していた。
休憩中。小さくラル氏。
途中休憩したり人を待ったりでパスーまでは2時間と少し。まっすぐ行けば多分2時間は掛からないだろう。
車は直接パスーインの前に停まったので、流れでそのままチェックインすることになった。ありがとうと手を振り、車が去っていくのを見送った。もう一度会いたい、とその時思った。
ちょうど停電中で、とりあえず散歩に出ることにした。KKHを川沿いに北上した。そのまま約1時間ほど歩き見晴らしの良いところまで来た。この辺りはちょうど2つの川が合流する河原の拡がっている部分で広々としている。これより先は幅が狭まり道路はカーブが続く山道になる。
それにしても、山の景色が素晴らしいところだ。灰色の荒々しい岩肌が力強い。空の青さと沿道の黄色く染まったポプラも調和している。カリマバードとはまた違ったストレートに心に響く美しさだ。
パスーがこれほどの場所とは想像していなかった。出発前にパスーとグルミットどちらが滞在するに良いか尋ねたところ、ラル氏はパスーと即答した。この地に立ってみてなるほどとその時の事を思い出した。
シーズンが終わりのせいか、ほとんど人の姿を見なかった。奇妙なくらい静かで動きの無い世界の底に、自分がひとりだけ息を潜めて存在していた。
お腹がすいたので、今度はKKHを南のほうに歩いてグレイシャーブリーズレストランへ。柄にもなく紅茶とケーキなど。高台にあるので眺望が開け、何とも気持ちの良いところです。