青い海と広い空、古の世界に誘うギリシアやローマの遺跡たちと近代都市、そして長雨と耳がちぎれるような冷たい吹雪… いろいろあった地中海世界ともお別れだ。
一気にアジアへ戻るぞ。
いざその時が近づくと、心に細波がたちはじめた。
それもこれも、この旅行の最初のわずか5日だけ滞在したマレーシアの心地良さを思い出したせいだ。
もうだいぶ昔ともいえる記憶が急に昨日のことのように生々しく甦ってきた。
理性抜きで東南アジアをこんなにも欲する自分は初めてだ。
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チュニジア最後の食事は空港のカフェでエスプレッソとフルーツタルト。
もうしばらくは美味しいエスプレッソは飲めそうにないかなあと寂しい気持ちになるが、その一方であの甘美な”ホワイト・コーヒー”があるではないか、と気を持ち直した。
ああ二つの世界。単にコーヒー如きにおいても世界は分割される。
深遠なるピュアなブラックと甘美な混ぜ物ホワイト。
ところで日本はそのどちらに属するのであろうか。微妙なところだ。
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ドバイ国際空港にて今度は確かに自分の足でショッピングモールにたつ。
でも、広すぎる。噂通りの世界。
そのうえ夜中。現地時間の22時過ぎ〜4時までをここで過ごす。はじめは色々歩き回ったが結局疲れて夜食をとる。
巨大なハンバーガーを前に、書店で購入した数独で時間をつぶす。眠くはならなかった。
途中3時に現金回収のために精算をするが、その後も追い出されることはない。
店舗の従業員はアジア系ばかりで当然のごとくアラブ人らしき人間はみあたらない。
時間が来たので店を出るが、すでにトランジット客はずいぶん減り人影はまばらだ。
巨大なガラス窓の外は、2ヶ月半前に驚きと高揚感を胸に毎日毎日疲れるまで歩き回った巨大な街だ。
不思議と懐かしい気はしない。移動続きの日々のおかげか、後ろを振り返るという気はあまり起きないのだ。
ゲートに着くと、そこに集まっている客はほとんどインドネシア人だろう。
皆背が低い。身長172cmの僕でも頭ひとつ分飛び出ていて、いつもと違って妙な気分だ。海外ではたいてい逆のことが多い。日本に来る西洋人は最初皆こう感じるのだろうか。
ここでひとつ発見!
エミレーツ航空はヨーロッパ便とアジア便では座席の大きさが違うようだ。
ヨーロッパ便では今回のチュニス→ドバイ、それとラルナカ→マルタ、アジア便ではドバイ→ジャカルタの利用だが、前者と比べて後者は座席の高さが特に違った。座面が幾分低いのだ。これは利用者の体の大きさに合わせて座席を選んでいるのだろう。確かに日本人女性や今回一緒になった体の小さいインドネシア人などがヨーロッパ便の座席に座ったら、ちょうど足裏が届くか届かないかくらいの感じで、あまり快適ではないだろう。
機内食 ドバイ→ジャカルタ 軽食
細長い棒状のパンはクロワッサン地。彼等にとって三日月の形はやはり受け入れられないのだろうか。
ごちそうさまでした。