赤バス 53番
僕が初めてバンコクを訪れた頃はまだBTSもMRTも建設中だった。移動はボートを除けば死ぬほどややこしい路線バスを探すか暑い中ひたすら歩くしかなかった。トゥクトゥクにも乗っているはずだがバンコクではほとんど記憶が無い。
赤い色で車体が塗られた路線バスには冷房が無く運賃も安いので庶民の足だ。車内が混雑していても乗降りが頻繁なのですぐに席が空くのもうれしい。
そのうえ、車体の形態やディテールに何となく親しみを感じるのだ。既視感がある。それもそのはず、実は赤バスの車両を作っているのは、我らがいすゞであり日野であり、ふそう(三菱)なのだ。
車両自体はかなり古いもので結構年季が入っている。エンジン音も現在の日本では考えられない程ガーガーとうるさい。
でも、ゆっくり走るバスの席に座り窓の縁に腕を載せ、歩いている時とはまた違った速度や視線の高さから普通の人々の生活を眺めるのも楽しい一時だ。散策では見えなかったものも見えたり、たまに不思議な発見もあったりする。
車内に入ってくる風が排気ガス混じりでむわっとするような熱さでも、信号待ちがやたら長かったり渋滞にはまって全然先に進まなくても、それでこそバンコクなのだ思える。
53番の赤バスは市街地の中心部を循環するルートだ。ずっと乗っていればいずれ同じ場所に戻ってくる。渋滞が無ければ1時間もかからない。適当なところで降りたくなっても次が来るので問題は無い。ただし必ず1回車体交換のため決まった場所で乗換えなければならない。
バンコクに来るたびに一度は乗っている。今回も20円でさくっと一周する。