一冊の本に導かれてはるばるラムまでやって来た
思えば1冊の本に導かれてはるばるここまでやってきたようなものだ。新潮文庫、マチョ・イネのアフリカ日記/西江雅之著。現在は絶版になっていてB○○K・○FFにでも行かないと手に入らない。ただし100円コーナーにあるだろう。写真と文章が半々ぐらいの見やすく読みやすい本だ。
もう10年以上も前のことになる。古本屋で100円だったのであまり期待せずに入手したのがこの本であり、西江雅之という人を知ったのもこの本が最初だった。
本書は、60〜80年代にかけての東アフリカに関する彼の私的な思い出を綴った文章と写真で構成されている。
中でも「裏街の女」が一番好きだ。著者にとっても昔の話なのに、まるでその場に居るかのような臨場感や息遣いが伝わってくる良い文章だ。最後の段落には心を動かされる。もう会うことのできない女性に対しての思い出に、外連味や衒いなどで飾ることを良しとしないところが、著者らしい正直さだ。それは、表現としてはぎりぎりのところにある。素っ気無さの一歩手前、シンプルだが、思いの描き方に過不足は感じられない。何度も読み返してしまう。
この本を手にして以来、アフリカには必ず行きたいと思っていたものの、優先順位があったり何だかんだで結局最後になってしまった。最後というのもある意味相応しいのかもしれない。
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そんな訳で、今ケニアのラムにいます。宿代をディスカウントしたかったので5日滞在するからと言ってみたら、あっさりOKされてしまいました。まあ、何といったって、ここでは急ぐ必要はありませんからね。
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<追記>この文庫本は僕がアフリカを去るにあたり、ケープタウンの Cat & Moose Backpackers Lodge に置いてきました。次は誰の手に、そして何処の地へ渡るのだろうか。
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