エジプト2 Nov. 2005
さて、とりあえず言えることは砂色の乾いた光景には食傷気味ということだ。ナイル河デルタでは農業が盛んだと学校で習ったことを思い出し、そちら方面に向かうことにした。アレクサンドリアと、その前にスエズ運河を見てみたかった。スエズとポートサイードが両端の町であることを地図を見て確認し、バスでスエズへ向かった。
スエズは紅海側の端に位置する町。とりたてて何があるわけでもなく、運河がスエズ湾に繋がる港近くに公園があり、町の人と一緒に規則的に通り過ぎる貨物船をひたすら見続けた。僕がいたその日の午後遅くは、地中海からインド洋方面に抜ける船が通る時間帯だった。きっちり計ったかの様に等時間で大型船が目の前をゆっくりと通り過ぎるのが不思議でずっと見ていた。町の人も大勢眺めていたけど、飽きないのかね。んー、意外と飽きなさそう。夕陽が差すなか静かでリラックスした雰囲気が心地よかった。
何を運んでいるのだろう
スエズ町中で。これは広告?大漁旗? アラビア文字は全く読めないのでわからない。
アレックスの街はゆるやかに湾曲する湾に沿ってひろがる。垢抜けた印象があるのは、非常に長く豊かな歴史を持つからだろうか。南欧に似た雰囲気も感じられる。とは言っても残念だが使うのはエジプト人なので、よくみるとあちこちが汚く綻びがある。
ここでまずはビザの延長をする必要があった。気が付けばあっという間の1か月、長旅を続けるにはペースダウンの期間はどうしても必要となる。広くて観光地が多く物価の安いエジプト、それにはうってつけの場所である。手続きは本来なら特に難しいことは無いはずだったのだが、実はここで大ポカをした。スエズで気付いたのだが、有効日の計算を一日間違えていたのだ。最終日の前日に移動としていたので繰り上がるのはまずい!。ガイドブックにはスエズからバスで3-4時間と載っていたので着いたその足で窓口に向かえばぎりぎり間に合うとふんだが、乗ったバスは予想外に6時間も掛かった。おかげでその日は既に時間外、窓口へは翌日に行く他はなかった。平然を装い恐る恐る申請をしたが、15分後には何の問題もなく延長のスタンプが押されたパスポートが返却された。新たなビザを見ると延長の開始は前日からとなっていた。ああ、ここがエジプトで本当に良かった。ついている、心からそう思った。しかしそこまで緩くてよいのかね?、罰金くらいは覚悟したけど…。窓口のおばちゃんありがとう。これでまだ1か月もエジプトに滞在できるのかと思うと自然と頬が緩んだ。
結果オーライだが胸のつっかえが取れたので気分は晴々、まずは海辺に向かった。広い空は明るく緩やかに流れる海風が心地良い。確かこの湾の中に古代の遺構が眠っているはずなのだが、静かな海を眺めても何も見えてはこない。そこでグレコ・ローマン博物館を訪れたが、改装のため暫くの間休館との貼紙があり、残念な事このうえなし。路面電車で街中を一日廻った後に前夜に続き魚料理を食べ、カイロに戻ることにした。
ゴッサムシティ に無事帰還。たった数日の不在なのに、この人いきれがもう懐かしい。
早速人の波に紛れ込み、相変わらず構ったり構われたり… 気が付くと時間だけが経っている。でも、悪くない、悪くはない。
とあるモスクにて、トルコのコンヤ発祥のイスラム神秘主義(スーフィズム)、メヴレヴィー教の舞踏を見る。これは観光客向けのショー(スーフィーダンス)なのだが、それでもひたすら回転運動を続ける踊りは見事。以下Wikipediaより再掲。
「スカートをはいた信者が音楽にあわせて、くるくると回転をし踊るという宗教行為(セマー)で知られる。これは祈りの手段であり、回転は宇宙の運行を表し、回転することで、神との一体を図るというものである。」
次から次へと踊り手が現れ、音楽に合わせてひたすら踊り続ける。
夜の散歩もまた楽しい。余計なものは夜の闇に隠れ、陰影がくっきりと浮かび上がる。大英帝国統治時代に作られた建物は見応えがある。これに気づいたのはここカイロが最初だったかもしれない。世界どこでもお見事。
カイロにはキリスト教(コプト正教)の信者も数多く住んでいて、大きな教会も存在する。隣のコプト美術館はまたここも改装中。覗いたら仕事してる気配が無いが?。
ご存じスフィンクス正面の KFC 店内より。街中と比べて1.5倍の価格。ピザハットも併設。
この時は別の宿に滞在していたのだが、前にいた宿に顔を出すと数人が砂漠ツアーに行く話ができていたので仲間に入れてもらうことにした。カイロからまとまって出発というわけでなく、砂漠近くのバフレイヤオアシスまでは自分で行き現地の代理店に申し込むということだったので、他の日本人や外国人も集まった。
バフレイヤオアシスから白砂漠、黒砂漠、ベドウィンの住む集落等を巡って帰ってくる一泊二日のお手軽ツアーにした。黒砂漠はゴツゴツした黒い岩の塊や丘のある砂漠。白砂漠はたぶん石灰岩が凸状に砂地から飛び出す異景。また鉱物の結晶が露出している所ではちょっとだけ砕いて頂いてきた。
宿泊は白砂漠で野営。赤く染まる夕暮れは言葉を失うほど美しく、気が付けば皆フラフラと歩きまわっていた。日が落ちれば音の無い世界。無数の煌めく星との無言の会話の時間。ツアー仲間はいるのだが口数は多くない。朝は嫌でも早起き。眠気も忘れる美しい夜明けだった。幻想的な光景の中では人は夢遊病者のように歩き回ることを知る。